▲釣り専用車を探すというと「4WDで、室内長が長くて……」という部分だけにこだわって探しがちだが、始めたての方にはそういったこと以上にこだわるべき重要なポイントがあります ▲釣り専用車を探すというと「4WDで、室内長が長くて……」という部分だけにこだわって探しがちだが、始めたての方にはそういったこと以上にこだわるべき重要なポイントがあります

釣りは果てしない幅の広さと奥行きの深さゆえに……

中古車評論家兼釣り人の伊達軍曹であります。過日のエントリーで「釣り車にとって重要なポイントは適度にボロいこと」と述べました。その見解は変わっておりませんが、もうひとつ重要なポイントがあることを忘れていました。それは「適度に安く、キャラ的に中庸であること」であります。

これはベテラン釣り師さんにはあまり関係ない話ですが、これから釣りを始めてみようとか、始めたばかりであるという人にはぜひ押さえておいてほしいポイントです。もう一度言いますが、釣り専用車にとって重要なのは「適度にボロいこと」と同時に「適度に安く、中庸であること」です。

「適度にボロい」というのが重要なのは「悪条件な道にもちゅうちょなく突き進むことができるから」ということですが、「適度に安く、中庸であること」が重要なのはなぜでしょうか?

それは、釣りというものの果てしない幅の広さと奥行きの深さゆえです。

▲ひとことで釣りといっても対象魚やフィールド、手法は本当に人それぞれ。かなり奥が深い趣味なのです ▲ひとことで釣りといっても対象魚やフィールド、手法は本当に人それぞれ。かなり奥が深い趣味なのです

ビギナーにありがちな「方向転換」に対応可能な予算で探すべし

本来は「最高の釣り車って何だろうね?」という議論は成立しません。なぜならばひと口に釣りといっても様々な種類があり、その種類によって使う道具の量やサイズも千差万別すぎるからです。ポイントのすぐ近くに住んでいるのか、それともポイントまで結構な距離を走る必要があるのかでも、「最高の釣り車」に対する考え方は変わってくるでしょう。とにかく「コレ!」という絶対の正解はないのが、釣り趣味という広大なフィールドなのです。

で、ベテランさんは確固とした自分の釣りスタイルを構築していますが、ビギナーのうちは必ず迷ったり、頻繁に方向転換を繰り返します。「コレで行こうかと思ってたけど、やっぱりあのスタイルで行ってみよう」とか。かくいう筆者もそうです。最初はちょっと遠くのサーフ(砂浜)を中心にしようかと考えていましたが、今は近場でのシーバス(スズキ)釣りが中心。この場合、使うタックル(道具)は似てますが、走る距離が全然違いますので、釣り車に求められる条件は結構変わります。

しかし、もしも最初の時点で「オレはサーフ中心で行くから、車はそこそこサイズのある4WDにしよう!」と早合点し、それを買ってしまっていたら? スタイルが変わった今となっては、デカい4WDは“無用の長物”とまではいいませんが、「ムダな買い物をしてしまった……」と後悔はしていたでしょう。

▲最初のうちはこんなサーフを主戦場にしようと思っていた筆者。写真は神奈川県茅ヶ崎市の辻堂海岸です ▲最初のうちはこんなサーフを主戦場にしようと思っていた筆者。写真は神奈川県茅ヶ崎市の辻堂海岸です

ということで、自分の確固たる釣りスタイルが固まるまでは「どんな用途にもある程度対応できる中庸なサイズとキャラクター」を持つ車を、「スタイルが固まった後に買い替えたとしても、大した苦痛は感じない程度の予算で買う」というのが非常に重要となるわけです。

そういった観点で、筆者を含むベテランではない釣り師に最適な車は何か? ということを考えますと、主な候補は以下の2モデルになるかもしれません。「かもしれません」というのは、やはり絶対の正解は存在しないからです。歯切れの悪い提案で申し訳ありませんが、仕方ないのであります。

両車とも平均車両価格は50万円前後とお手頃!

さて、第一の提案は旧型日産 キューブです。

理想をいえばもう少し前後の車内長があった方がロッド(竿)を積むには便利ですが、やたら長い磯釣り用ロッドや超遠投用ロッドを積むのでなければ十分です。またキューブのシートは非常に快適であるため長距離移動の際も腰やお尻が非常にラクで、また走行性能もそこそこ良好ですので運転が苦になりません。

中古車の平均車両価格はモデル全体で約29万円(2015年3月11日現在)。モデル後期である2007年1月~2008年10月に生産された車両でも約50万円とかなり手頃です。カタログ燃費も10・15モードで16~19km/Lぐらいと良好。これぞまさに「適度に安く、キャラ的に中庸」な釣り車の見本的存在です。

▲02年10月から08年10月まで販売された2代目のキューブ。「なるべく遅く見えるデザイン」も話題に ▲02年10月から08年10月まで販売された2代目のキューブ。「なるべく遅く見えるデザイン」も話題に

もう少し変化球的な選択をしたい場合はトヨタ プロボックスでしょうか。

ご承知のとおり実用性を徹底追求したビジネスワゴンです。これまた欲をいえばもっと全長がある車の方がロッドを積むには便利ですが、2ピースのロッドを分割して積載する分には何の問題もありません。ビジネスシーンで鍛えられたヘビーデューティな働きっぷりについては言うまでもないでしょう。

カタログ燃費もおおむね10・15モードで16~17km/L(ガソリン車・FFの場合)とまあまあで、平均車両価格も約47万円とお手頃。このぐらいの年式は流通量がやや少なめですが、かなりオススメの「手頃で中庸な釣り車」であります。

▲営業車としておなじみのトヨタ プロボックスバンの乗用車版。ハードにも使える頼もしい存在です ▲営業車としておなじみのトヨタ プロボックスバンの乗用車版。ハードにも使える頼もしい存在です

これらの車を使って1年、2年と釣りを続けているうちに、「わたしの場合は軽の箱バンが実はいちばんだな」とか、「自分はやはりフルタイム4WDであることが絶対条件」などと方向性が固まってくることでしょう。それと同時に釣りの腕前は上がり、見解も深まっているはず。そのときになって初めて、専門性の強い釣り車を購入するのがたぶんベストです。まずは「お手頃&中庸」で行きましょう。

text/伊達軍曹  photo/伊達軍曹、トヨタ、日産