ミレニアム時に登場したユニークなスタイルのトヨタ WiLL Viの中古車は今どうなってる?
2020/12/12
異業種が集まり合同でマーケティングした意欲作!?
みなさんは『WiLLプロジェクト』というものを覚えていますでしょうか。
ノストラダムスの大予言で「いよいよ人類滅亡か!?」とビクビクし、ガングロを超えたヤマンバギャルが渋谷を闊歩していた1999年8月にスタートしたプロジェクトです。
アサヒビール、花王、近畿日本ツーリスト、トヨタ自動車、松下電器産業(現・パナソニック)という異業種企業が合同で”WiLL”というブランドを作成(のちにコクヨ、江崎グリコが参加)。
そして、統一感のあるデザインで商品展開するとともに、製品に企業名ではなく”WiLL”の共通ロゴを用いて、生活感を排除したライフスタイルを提案するという、マーケティングの社会実験的要素が強いプロジェクトでした。
立ち上げ当初に5社共同で出したプレスリリースを見ると、とても壮大な目的をもって発足したように思えました。
しかし、当時を思い出すと参加した企業も何をしていいかわからず、なんとなくブランドイメージの白とオレンジを使い、デザインしましたという「で、普通の商品と何が違うの?」というものが多かったことを覚えています。
そんな中、カーセンサーが同じ車業界だからというひいき目を一切なくし、トヨタからは「トヨタブランドではできない製品を作る」「見たことのない車を送り出す」という気概を感じました。
これは私見ですが、1980年代後半から90年代にかけて日産が手がけた、パイクカーシリーズを超えてやるという意気込みがあったのではないかと思います。
トヨタは、WiLLプロジェクトで、WiLL Vi、WiLL VS、WiLL サイファという3モデルを世に送り出しています。
今回はトヨタのWiLLプロジェクトモデルの中から、第1弾で登場したWiLL Viの中古車事情を見ていきます。
その前にWiLL Viはどんなモデルだったのか振り返ってみましょう。
遊び心あふれるWiLL Viのモチーフは、かぼちゃの馬車
ミレニアムカウントダウンの熱狂も冷めやらぬ、2000年1月17日に発売されたWiLL Vi。
そのスタイルは斬新で、中でも目を引くのがサイドシルエット。リアガラスの下端がボディ内側に向かって大きくえぐれたようなスタイルは、クリフカットシルエットと呼ばれます。
そのうえで、フロントガラス下端から前のバンパー下部までのラインと、リアガラス下端からリアバンパーにかけてのラインに、アーチのような共通性をもたせることで、デザイン的なまとまり感を高めていました。
フェンダーは、大きく膨らんだブリスターフェンダーを採用。中に収まるタイヤは、15インチと当時としては大きめのものに。これらは、かぼちゃの馬車をイメージしてデザインされたといわれています。
フロントドア前方にある丸いウインカーレンズは、ユーノスロードスターのものを、ドアミラーはダイハツ オプティのものを流用したものでした。
ボディ形状は、4ドア+独立したトランクが備わるセダンになりますが、サイズ的にはハッチバック感覚で運転できる車でした。普通のセダンの他、ルーフが幌になるキャンバストップも用意されました。
インテリアデザインは、軽自動車を中心とした近年の小型車が多く取り入れている、リラックスできるリビングのような雰囲気でまとめています。素材感や触感を生かしつつ、配色にもこだわることで“なごみ”をイメージしたといいます。
シートは、ベンチタイプにしてソファ感覚で座れるように。その関係でシフトレバーはステアリング裏に付いたコラム式になりました。
排気量は、1.3Lで駆動方式はFFのみの設定。2000年8月には“秋・冬コレクション”と題し、新外板色・新内装色を設定。このあたりからも、トヨタの並々ならぬ意欲が見て取れます。
中古車流通量は約20台と少ないながら総額80万円で十分狙える
そんなWiLL Viですが、生産期間は2000年1月~2001年12月のわずか2年。かなり短命なモデルとなってしましました。ちなみに他のWiLLモデルも同じように短命でした。
WiLLプロジェクトは、スタート後もパッとせず、2004年7月には公式サイトが閉鎖され、プロジェクト自体が終焉を迎えました。おそらく、終焉前からプロジェクトに参画した企業間、そしてトヨタ社内でもいろいろな意見があったのでしょうね。
そんなWiLL Viの中古車は、2020年12月現在、約20台流通していました。新車時に台数が出たモデルではないので、これでもそこそこ残っている方ではないでしょうか。ただ、キャンバストップは流通していませんでした。
価格は、総額30万円から最も高い値がついたものでも総額80万円ほどと、比較的リーズナブル。プレミアム価格はついておらず、年式相応なプライスと言えます。
20年前のモデルだけに、価格が安くなるほど走行距離は多めで、10万km以上走っているものも珍しくありません。
ボディカラーは白、銀、黒が多いですが、茶色っぽいカラーのものも何台かありました。この車の世界観には普通とは違う色がピッタリハマると思いますよ。
おそらくですが、こんなにユニークな形の車は今後登場することはないはず。そう考えると、欲しい人は少し予算をアップして、条件のいい中古車を買い、長く楽しむのもよいでしょう。
▼検索条件
トヨタ WiLL Vi(初代)×全国
自動車ライター
高橋満(BRIDGE MAN)
求人誌編集部、カーセンサー編集部を経てエディター/ライターとして1999年に独立。独立後は自動車の他、音楽、アウトドアなどをテーマに執筆。得意としているのは人物インタビュー。著名人から一般の方まで、心の中に深く潜り込んでその人自身も気づいていなかった本音を引き出すことを心がけている。愛車はフィアット500C by DIESEL
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